喜んで……

  • 節分から立春、暦の上では春がやってくるが、一番寒いのがこの季節。
     夜は熱燗と鍋に限ると、ある店で知人と一杯やっていたら、注文のたびに店員が「はい、喜んで」と答える。
     悪い気はしないが、妙に気にさわる言葉でもある。
  • 店員がみな今風の早口なので、「喜んで」という割には気持ちが籠もっていない。
     店によっては「いらっしゃいませこんにちは」と 間もあけず、棒読みのような挨拶をするところもある。
     これまた、その店のマニュアルなのだろうが、次々に客が入ってくるたびに大声でやられると、うるさくてかなわない。
     いっそ「ませこん」とでも短くはしょったらどうだ。
  • 電車や雑踏の中では黙って人を押し分け、
     目をつり上げて睨む無言劇が繰り広げられているだけに、店内のマニュアル挨拶の氾濫がよけい耳に障る。
     馬鹿丁寧な挨拶より、
    「いらっしゃい、遅かったわね」
     というなじみの女将の笑顔の方が、遙かに身に染みる。そろそろ河岸を替えようか。  (群星)