神の声を聞く

  • 元ちとせ、という奄美出身の歌手が人気だ。
     高音の裏声で島唄特有の小節をきかせて歌う。
     あほだら経のようなラップや、がなり立てるだけのロックに辟易する大人にも、久しぶりに胸に染みいるような彼女の声が支持されている。
  • どんな声音か知らないが、政治家が好きなのは天の声と声なき声。
     日米安保条約反対の数万の人々に国会を包囲されながら、「私は国民の声なき声に耳を傾けている」と言い放ったのは、岸信介首相。
     一方、自民党初の総裁公選で大平正芳氏と争った福田赳夫氏は、「天命を待つ」と余裕を見せたが、予備選に敗れ、「天の声にもときには変な声がある」と悔しがった。
  • 声の旧字は「聲」。神を招くときに用いた石製の楽器、磬(けい)と耳を合わせた文字で、原義は神の声を聞くことという。
     世の中があまりに騒がしいためか、天の声も声なき声も、聞こえなくなってしまった。
     テレビも携帯電話も車も何も、人為的な音は消し去って、天の声に耳を澄ます日を設けてはどうだろう。(群星)